新聞報道で見る開戦前夜~12月7日の朝日新聞

12月7日、真珠湾攻撃1日前のこの日も、朝日新聞は一面トップで日米交渉の続報を伝えています。

日本から派遣された引き揚げ船はこの日も、多くの在米日本人を乗せて帰国の途を急ぎました。

開戦間近を匂わせる記事は至るところで見られるものの、大東亜戦争最初の1撃が放たれるハワイ周辺の動きについて、1行たりとも報道されることはありませんでした。

『日米会談 重大局面』『比島臨戦態勢』

朝日新聞はこの日も、朝刊一面で日米交渉の進展を伝えています。先月26日にハル国務長官からいわゆる「ハルノート」が通告されてからも、幾たびか両国担当が顔を合わせて会談を行ったものの、一歩も前進を見られない状況に対する苛立ちと悲憤が行間から伝わってきます。交渉はまだこれからも継続されるが、とにかく好転すると信じて状況の推移を見守りたい、と締める朝日の言葉はむなしいの一言です。

また、その隣の記事で『比島臨戦態勢へ 非常時緊急会合開く』との見出しで、フィリピン政府が閣僚を集めて会合を開いたニュースを伝えています。アメリカの支配下にあったフィリピンには、仏印に進駐してきた日本軍をけん制すべく米陸軍の大軍が配備されていました。日米開戦となれば、フィリピン国内がその決戦場になる事態は避けられません。それと同時に、フィリピンの兵士たちは米軍に編入されて最前線で日本軍と戦う状況を強いられるのです。

『打ち続く“すき焼き送別会”』

『打ち続く“すき焼き送別会” 来る龍田丸に引き揚げの旅心複雑』という記事。7月の対日資産凍結以来、日本政府は米国に引き揚げ船の龍田丸を派遣し、帰国希望の在留邦人の輸送を続けていました。ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴなどに在住する日本の商社マンとその家族が続々帰国する姿を目につけ、アメリカ人たちもいよいよきな臭くなった現実を実感してきている、と記事は伝えています。

ニューヨークにある、東京名物のすき焼きレストラン。ここでは日本に帰国する邦人と、戦争になってもアメリカにとどまると決意した日本人が集まり、盛大に送別会が開催されました。何とそこに事情を知らぬ米国人カップルが紛れ込んでともに酒食を楽しんだとか。国も人種も国益を巡る争いも関係なく、日米の人々がテーブルをともにする光景を見て、記者は「食べ物に国境はない」と感慨深げ。この言葉だけで、何だか救われる思いがします。

夕刊は99%軍事・外交記事

12月7日の夕刊記事。どこを見ても軍事・外交・国際問題の見出しで埋め尽くされています。『ルーズベルト大統領の照会に帝国の態度を開明 緊張の第8次日米会談』『帝国、米の出方監視』『英帝国の大痛手 極東艦隊増派の悩み』『英、フィンランド、ハンガリー、ルーマニアに宣戦布告』『東亜新秩序建設へ 妨害を断固排撃 東亜経済懇談会終わる』……。もうすでに世界中で戦争が起きているかのような物騒な雰囲気です。

新聞がこれだけ戦争を匂わせる記事を大量に流していたのですから、国民の間でも「もはや戦争は避けられない」という空気はすでに醸成されていたのではないでしょうか。

 

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